■収入はなかった
「僕の給与は月五万円、両親は無給でした」
牛乳市場が暴落し買ってくれるはずの元締めから廃棄処分の指示が来た。
収入が激減した。
「結局、農家はそうした仕組みの歯車でしかなく、牛乳を絞って出すだけなんですよ。なんでも買い取ってくれるって良さはあります。でもいい牛乳を作るかどうかは関係ない。そしたら農家はみんな考えなくなってしまうんです。」
話を聞けば聞くほどその仕組みに驚きを隠せない。現代の農奴である。
「もちろん、買い取ってもらうとか、いいところもあるんです。でも自分はこれではダメだとやり方を変えることにしました。」
世界の農業を見て回り、本物を作り、自分で直接商品開発を消費者地訴えかけるべだと路線変更。
そこからこだわり抜いて作った牛乳から、本物のヨーグルトを作ろうと頑張りぬいた。少しづつ上がって来た売り上げを、工場設営に回し、小さいながらも自分の製造拠点を作り上げた。
出来上がったものには一切添加物を加えたくない。本物だけで勝負したい。
そしてついに自慢の商品が出来上がった。
「召し上がってみてください」
美味い!
驚いた。
「これ食べるととても腸の調子が良くなるんです。女性が大喜びで・・・」
どのくらい美味しかったかというと、そのあと僕は東京に持ち帰るために、ヨーグルトとジェラートを一万円以上大人買いしたということで理解してもらえると思う。
今年の熊本グランプリに、未来の日本の農家を背負った若者が参加する。
素晴らしい大会になるに違いない。