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TAKUYA HANE

ベトナムにて|ナンバーワンを体感


■最高のマッサージ!?

僕はマッサージが好きだ。

「だったら、ベトナム1うまいとこに連れてってあげようか?」

さすがだ。パナソニック支社長はいうことが違う。ノーとという理由がない。

「でもね、その人、当たり前だけど1人しかできないから、もう1人は別の人ね。どっちが受けたい?」

「いや。僕だよね、やっぱ・・・」 「はい、もちろん受けたいです」

こういう時、うちの得能は引かない。さらには副社長になって、当然のごとく、権利を強く主張するようになってきた。

ては、仕方ない。正々堂々と、社会人らしく、じゃんけんで決めようじゃないか!

最初はグー!じゃんけんポーン!

勝った!まずは一勝!

最初はグー!じゃんけんポーン!

負けた。一対一!

いい勝負だ。

じゃあ今度こそ!

最初はグー!じゃんけんポーン!!

な、なんと、負けてしまった。

くやしー!ベトナム1が・・・。

いや、他の人だってうまい可能性は十分ある!!

どんとこい!

お店の名前は「マッサージ・ナンバー1」。

素晴らしい。直球である。

そこまで自信を持ってみたいというものだ。

三人とも同じ部屋だった。男性は短パン一枚となり、女性の得能は、短パン以外に、黒いティーシャツのようなものを着せられた。

さあ、どんな人が現れるのか?

まずは、得能!

ベトナムいちの女性は、学級委員長のような趣の若い女の子だった。30代前半くらいか?

なんか、もう顔を見るだけでうまいなってのがわかる。落ち着いてて、凜としている。さすがである。

そして、小林君についたのは、もっと若い子。高校生くらいにしか見えない。ベトナム人は小さいので若く見えるだけかもしれないが、結構、可愛らしい。

なるほど、まだまだ若手の新人なんだろう。

ここは結構、若い子がやってくれる店なんだね。それで駐在のおじさんたちに人気なのかもしれない。

そして僕だ。

関取(せきとり)が現れた。

え?どういうことだ?

ベトナム人は痩せてて細いんじゃあなかったのか?

関取がなぜいるのだ?

この人はアオザイを着れない気がする。

いや、関取でもマッサージがうまければなんら問題はない。受けて立とうじゃないか。

 

■関取の実力

マッサージが始まった。

そして程なく理解した。

関取は雑である。

そして、なんか痛い。

僕は痛いマッサージは苦手である。

「ちょちょ・・痛い痛い」

というと、片言の日本語で、

「イタイ?」

「痛い!」

「ハハハ」

と笑う。

何がおかしいのかわからない。

そして、しばらくするとまた痛くなる。

「痛いって・・・」

「イタイ?」

「痛いよっ!」

「ハハハ」

ハハハじゃねーよ。

得能をのぞいて見た。

うっとりとしている。

くっそー・・・。

えーい、気を取り直そう。

視界から関取を消してしまえば、別の感覚になれるのではないか?

僕の脳が、視覚情報によって事実を歪曲している可能性もある。逆バーチャル・リアリティである。

目を閉じて、触覚だけに集中した。

足裏からスネの方に上がってきた。

ああ、そっちはそんなに痛くない。

まあ気持ち良い。

これならなんとかなりそうだ。

と思ったのもつかの間・・・。

僕の足先に何かが当たる。

関取が動くたびに何かがあたる。

こ、これは?

関取の胸だった。

関取が大きいので、スネを上下するたびに、胸が足先に当たるのだ。

どういうわけだろう?

全く嬉しくない。

いや、僕も男だ。ちょっとくらい喜んでも良さそうじゃないか。

喜べない。

その弾力感が、関取なのだ。

脳内に送り込まれてくるあらゆる五感情報が、「全くエロくないです」という分析結果を叩き出してくる。

時々、お腹にもあたるのだが、もう、お腹なのか胸なのかもわからない。

ミシュランタイヤのマスコットみたいだ。

そして僕らは裏返しにされた。うつ伏せにされ、背中をむき出しにされた。

すると、関取が背中の上に、のしのしと上がってきた。

ズシンとくる。

そして、なんと、生足をぴったりと背中に押し付けてきた。

何かに締め付けられるような感じだった。

ひやりとした。

そう、関取の足は驚くほど冷たかった。

怖い記憶が蘇ってきた。

どこかでこんな体験をしたことがある。

思い出した。

タイで首に巻きつけられたニシキヘビだった。

あの時は一匹のニシキヘビだった。

今は二匹のニシキヘビが僕の背中を締め付けている。

怖かった。

うつ伏せなので逃げようがなかった。

恐怖に打ち勝つために、人間に残された最後の武器、イマジネーションを使うことにした。

ディズニーシーでも、ミッキーはイマジネーションで敵に打ち勝っている。

僕が今、受けてるのは、得能にマッサージをしている学級委員長の方だ!

脳に送り込まれてくるあらゆるビッグデータが、その想像を打ち消してくる。

「ニシキヘビです」 「ニシキヘビです」

あかん、想像力はどこへいった?

(ちがう、この人は本当はマッサージがうまいのだ。だからとっても今は気持ちが良いのだ!)

「ニシキヘビです」 「危険です。ニシキヘビです。」

全く癒されなかった・・・。

 

■行くなら三人で

程なく、マッサージが終了した。

「最高でした」

得能がとろけるような顔をしていた。

「羽根さんはどうでしたか?」

小林君の手前、ジャングルクルーズに行ってたとは言えなかった。

関取にチップを手渡した。

ニッコリ笑って、受け取ってくれた。

故郷にニシキを飾った気分だった。

ハノイに行ったらナンバー1マッサージがお勧めである。

できれば三人で行って頂きたい。

学級委員長と高校生と関取の究極のロシアン・ルーレットを楽しむことができる。

もちろん、一番のオススメはマッサージ界の横綱、コニシキである。

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